ココアブラウン
「最近、あいつなんか色気づいたよな」

「そうそう、急に服とかバック、ブランドにして」

「なんかあったんだろうか?」

換気扇から下をみるとタバコを片手にあたしと同じ部署の営業のオトコたちが4人いた。
換気扇のカバーは向こうからは網目になっているし、上にはタバコの煙が白くたまっていてオトコたちからあたしの姿は見えない。

喫煙室は2畳ほどの狭いスペースで真ん中に卓上型の灰皿が置かれている。

タバコを吸いながら重要なことが伝えられることもあってオトコたちの間には禁煙の兆しはなかった。

灰皿には空気清浄機能がついていて煙を吸い込んできれいな空気を出すはずだけど、一応としかいえないおざなりなもので、あまりにもたくさんの人間が吐き出す煙でさび付いて動かなくなっている。


だから煙は全部上に昇って換気扇を止まらせたのだ。

「ま、オトコだろうな」


タバコを片手にふかしながらそう言ったのは山本だった。

「井上が西田少し口説いてただろ。かわいいとかなんとかいって。それで西田が調子づいてがんばりだしちゃったんだな」

「でも山本さん、最近西田さんのこと口説いているんじゃないですか?」

「ああ、あいつの顔見るのももう残りわずかになるだろうし」

ーどういうことなの?-

あたしは耳をそばだてた。
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