ココアブラウン
「こないだの情報漏洩、なんだかんだいっても事務の責任だろ。リストの管理とか。
どっからにしろ盗まれて流されたなんて誰が責任取るんだって話だよ。誰かを処分しなきゃかっこがつかねぇだろ」

「俺たち営業には関係ないってことですか?誰かが処分されるんじゃ」

「営業はせいぜい取引先に頭下げるくらいさ、なんでもない」

「それにしたって。山本さん、なんで西田さんが処分だと?」

「考えても見ろよ、浅井絵里とかその辺の若いやつの首切ったって1つじゃ足りねえよ。
だけど西田って勤続10年だか11年だかの古だぬき。あいつの首ひとつで話は丸く収まるだろ。どうせ結婚もしてるしおとなしく家庭に入っちゃえば誰も傷つかなくて万々歳」

「そうか。西田さんがいなくなれば若い子入ってくるかな」

「ああ、補充は派遣社員だ。若い子。給料が高くて事務なんて会社のお荷物にしかならねえからな」

「だから、山本さん。西田さんのこと口説くんですか?」

「どうせ向こうから口説かれるなら浅井くらいの若い子がいいよな。井上も西田に色目使われてびびって逃げたんだろ。俺くらいになるとああいう女も食えるようになる」


山本の含み笑いが聞こえた。


「あいつはさ」


「あいつってブラックバスなんだよ。釣るのはスポーツでスリルがあって面白いけど釣っちまったら飾ってきれいな魚でもなし、食ってうまいもんじゃなし」


おもねるような笑い声も聞こえてくる。

「バス釣りですか」

「そう、でもあいつそんなに釣るの難しいわけでもないぜ。優しい言葉でもかけてやりゃあな。近いうちに俺に落ちるね」
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