ココアブラウン
「今日上司に女房いつまで働かせるのかって嫌味いわれた。お前が会社の制服で外をうろうろしてるのを俺の上司に見られた。若い子と同じ制服で。失笑されたよ。料理の教師とかピアノの先生なら続けるのはステイタスだ。だけどお前の会社なんか仕事してるといばれるようなたいした会社じゃないだろ」

「待って、そんな勝手に」

「最近は帰りも遅いようだし、料理は手抜き。主婦として家を守っているとはお世辞にもいえない。ったく、真面目だというから嫁にもらったがまた俺は仲人口にだまされたんだ」

あたしの中で何かが音を立てた。ぶつりと太いロープが力任せに引きちぎられるような鈍い音が確かに聞こえた。
静かに夫に語りかけた。

「だまされたって、あたしはあなたをだましたの?」

「そうだ、地味で家庭的な女だと思って再婚した。なのに、なんなんだ。最近着飾っているようだし、結局お前も美樹と同じだ」

「美樹さんがなんの関係があるの。あたしはあたしなのよ!」
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