ココアブラウン

「お前、美樹と会って何か吹き込まれたのか？」


「美樹さんは何も言わなかったわ。ただ、隆太くんにあなたを会わせたかっただけだと思う」

「隆太か、あいついくつになったんだっけな」

「あなたはあたしと結婚したときから子どもを望んでなかったわね。なぜなの？あたしはごはんを作ってあなたの世話をするためだけにここに来たの？なら、家政婦でもなんでも雇えばよかったじゃない」

「子どもは隆太一人で十分だ。それに独身の男の家に家政婦を呼ぶなんて健全なプライベートをもってないと烙印を押されてしまう」




「会社ってとこはな、仕事だけじゃないんだ。円満な家庭があってこそ一人前の男としてみなされる。美人で専業主婦の妻と子ども。これが模範的な家庭なんだ。それなのに美樹は仕事を始めた、自分を試したいといって。お前ら女は何を考えてる？男が養ってやると言ってるんだったらそれについてくるのが当たり前だろう。」


「そんなふうだから、美樹さんは出て行ったのね」