ココアブラウン
飲み会はなごやかだった。

絵里と雄治が着いてからの新はとても雄弁だった。

あたしが知ってる会社の井上新。

あたしより、2つ下。

独身。

1年前に転勤してきたばかり。

お調子者。

転勤するなり難攻不落の取引先を簡単に落とした。

あたしが知ってる新はそれくらいだ。

今の新は会社で見るままの姿で絵里をからかい、
雄治のウンチクに耳を傾け、少しでも空いたグラスにはビールを注ぐ。

「新、お前さ、ゆかちゃんゆかちゃん言ってた割りに西田さんと話さないな」

「ゆかちゃんは俺と話すのイヤそうだからさ、俺もちっと遠慮してるんすよ」

「よし、じゃあお前にチャンスをやろう。
帰り西田さん送ってけ。ただし、送りオオカミ不可」

「いや、礼儀としてオオカミにはなるでしょ?じゃ、ゆかちゃん、帰り送るから遠慮なく飲むように」


新はあたしのグラスにまたビールをいっぱいに満たした。

「俺の酒、飲めない?」

あたしはグラスぎりぎりまでの泡立つビールを一息に飲み干した。


全身が酒に満たされてた。
< 14 / 207 >

この作品をシェア

pagetop