ココアブラウン
パソコンのキーをたたく音がする。

新も何も言ってはくれない。

新はあたしのことを見てはくれない。

あたしは新にかわいいと思われたくて自分を変えたくなった。

だけど、あれ以来、新と話すことはなかったしそれどころか新はあたしのことを避けてる。

媚びてぜいたくなオンナだと思われて。

憤ってる。多分。

夫がいながら自分を誘惑した女に、それを断れなかった自分に。

こんな恋人たちの夜に会いたくないオンナだったんだろう。


あたしと新の間の空気がどんどん濃縮されていく。

機械音だけが響くシンとしたオフィス。




嫌われていても、せめて。



ゼロに。



何もなかったあのころに戻りたい。

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