ココアブラウン
夢かうつつか寝てか覚めてか

本当にわからなくなった。ひどくリアルな夢のようにも思えたし、想像の中の現実のような気もした。

ただ、燃え尽きたキャンドルのろうの匂いが残って、冴えた頭のどこかがこれを現実だと告げていた。

毛布にくるまったまま、トロトロと少しまどろんだ。


ひんやりとした冷気を感じてあたしは空気の流れを追った。

窓を開けて新があたしのほうを見ながら座っていた。

はだけた上半身のまま、片ひざを立てて。



新の唇が動く。



あたしはそれを読み取っていた。



「あいみての のちのこころにくらぶれば」




あたしはこの句の下の句を知ってる。

千年の昔から恋愛なんて大差はない。逢ってしまえば切なくなって想いはつのる。

逢わなければそのほうが幸せだった。




寝返りを打つ振りをして毛布の中にもぐりこんだ。

涙がすぅっと流れてあたしは下の句を唱えた。



「むかしは ものを おもはざりけり」
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