ココアブラウン
すっかり街は明るくなっていた。

電車に乗って会社へ向かった。

かかとの折れた靴は歩きにくかった。

左足のかかとを力任せに折ってあたしはかかとのないその靴で歩いた。

ストッキングをはかない足は12月の寒空の街ではやたら目立っていた。


会社に着く。

更衣室の前であたしは立ち止まった。


このドアを開けたら、絵里はどんな顔をする?

昨日と同じ洋服だということに気づくだろうか?

かかとのない靴を笑うだろうか?


それとも。


そんなことに気づくほどの余裕もないだろうか?



新は。

あたしの顔を見て話しかけてくれるんだろうか?

前と同じようにあたしを避けるんだろうか?

前?

昨日より前のあたしを避けてたときなんだろうか?

それとも。


逢う前の冗談交じりに言葉をかわしていたあのときまで時を遡れるんだろうか?


あたしはそんなことを考えながら制服に着替えた。


オフィスに通じるドアを開ける。


居並ぶ全員があたしのほうをみた。
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