ココアブラウン
雄治とエレベーターに乗って社外にでた。

やっぱりかかとの折れた靴は歩きづらくてあたしは雄治の歩くスピードから遅れ、ほとんど走っていた。


雄治はそんなあたしに気を使うでもなく、ものすごいスピードで歩いていく。

あたしは必死に雄治について走っていた。

雄治は何もいわないまま、どんどん歩いていく。



「ここで」


会社から20分も歩いてあたしたちはさびれた喫茶店に入った。


「ここなら、会社のヤツは誰も来ないから」

あたしは息が乱れて落ち着くまでにずいぶん長い時間がかかった。

出されたおしぼりで目頭を押さえる。


なんで?

なんで?

心臓が口から飛び出さんばかりに脈打っていてそれは走ったせいなのか、心が悲鳴をあげたからなのか、あたしには判断がつかなかった。


水を一息に飲み干してむせ、咳き込んでまたおしぼりで顔を抑えた。


「大丈夫?」

「ええ、少しは」



雄治は話し始めた。
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