ココアブラウン
「西田くん、だから」

「あ、すみません。ちょっと聞き逃しました。少しぼうっとして」


部長はあたしに一枚のメモ用紙を渡した。


「ここがあいつの入院先だ。浅井にも伝えてやってくれ。1週間もしたらけろっと戻ってくるだろうから、私はあいつの受入部署を探すよ。戻ってきたら転勤させるから。あいつも担当を譲るとわがまま言って私を困らせたが、今となってはそれがあったから今回の件もスムーズに解決できそうだ。西田くん年明け早々で悪いがすぐに準備をしてくれ」


ー転勤ってどこだろう?国内だろうか、それとも海外?ー


部長はこれから探すといってる。


どこに決まるかはわからないけど、戻ってきても離れ離れになってしまう。


でも、新はあたしのことは好きじゃない。

付き合ってるわけでもない。


連れてってと泣きじゃくるわけにはいかないんだ。




それでいいのかもしれない。




新はあたしをかばってくれた。


それだけでもう何も望むものなどないんだ。




どこか遠くで新が幸せになるよう祈るくらいしか、あたしが新にしてあげられることはない。

< 171 / 207 >

この作品をシェア

pagetop