ココアブラウン
葬儀の手配は部長と転勤先に決まっていた親会社が主体となって行われた。

そうはいっても、オトコたちがやることだから葬儀屋に電話をするのが関の山で実際の細かいことー精進おとしの用意とか取引先へのFAX、次々と届く弔電の仕分けーなんかはあたしと絵里がこなしていた。

傘をさして絵里と歩く。

蝶のように歩く絵里も今日は羽を濡らしてしまったようで、とぼとぼと足を引きずるように歩いていた。



斎場に着いた。


入り口で新の名前の書かれた木札と、「井上家」と書かれた忌中のちょうちんが、今から何時間後かに始まる新との最期のお別れのステージがここだということをあたしに知らせていた。

絵里が墨で書かれた新の名前を見て喉を詰まらせる。


「絵里ちゃん、ほら。行こう」

あたしたちは今日、会社関係の会葬者の受付をすることになっていた。

風が吹きすさんで寒い外のテントで必要な備品ー筆や会葬御礼のバックーをチェックして準備を進めていった。
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