ココアブラウン
バラを抱えたまま、繁華街のまんなかを闊歩して銀行に寄った。

ATMで現金を下ろす。

新札で20万円。

きっちりとそろえて封筒に入れた。

時計を見るとそろそろ12時、美樹との約束の時間だ。


美樹の会社の自動ドアを抜ける。

受付で来訪の意思を伝えた。


「由香里といいますが佐々木美樹さんとお約束があります」

「お待ちしてました。こちらへどうぞ」


応接室に通されてあたしは美樹を待った。

今日は待たされることもなく、美樹はすぐに入ってきた。


「やっぱり西田って言わないのね」


美樹はあたしの向かいのイスを引きながら言った。

コーヒーを持って入ってきた女の子にちょっと手を上げる。

「西田が半狂乱になってるわよ。私のとこにも電話があって、由香里に何を吹き込んだんだ!って怒鳴ってたわ」

コーヒーにミルクを入れて美樹は一口飲んだ。

カップについたルージュのあとを指でぬぐって続ける。

「離婚届送りつけたんだって?あなたもやるじゃない。あいつはそこまでされてもやっぱりわからないのね。なんとかは死ななきゃなおらないって言うし」

< 202 / 207 >

この作品をシェア

pagetop