ココアブラウン
まじまじと美樹の顔を見つめた。

まだ、誰にも言っていなかったのに・・・・。


「誰の子だなんて野暮なことは聞かないわ」

きれいに手入れされた指先を美しい動作で組みなおした。



あきらめていた赤ちゃんがあたしの中にいる。

あたしはおかあさんになれる。


「由香里さん」

美樹は冷めかけたコーヒーを飲んでから言った。


「正直な話、子ども抱えて無職はつらいわよ。バイトでよければうちの編集長に話してあげてもいいけど」


せっかくだけど、とあたしは断った。



「強がるのね」




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