ココアブラウン
リビングの観葉植物に水をやり終えたとき夫のアシスタントを務める女性から電話があった。

「明日から1週間急な出張のため、奥様は出張の準備をお願いします。荷物は私が1時間後に取りに伺います」



事務的な声だった。


甲高い、オンナの声。


お待ちしています。と答えたあたしの言葉を聞こえなかったように流して電話は切られた。


ヒステリックに受話器を置く音がいつまでも耳に残った。


ツーツーツーと響く音をたっぷり1分ほどきいてからあたしは受話器を置いた。


ーいけないー



1時間で出張の準備をして来客を迎える準備をしなければ。

あたしはあわててクローゼットをあけた。



出張。



・・・・あたしには何も伝えずに。
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