ココアブラウン

呷る

次の日は朝から雨が降っていた。

遠くのほうがかすんで見える、霧のような雨。

また、ぼんやりとあたしはココアを飲んでいた。

何もやることがない。

絵里は仕事をうまくさばいているだろうか。

クレームや電話に応対できているだろうか。


ーあたしの心配することじゃないかー


掃除したばかりの廊下の隅に髪の毛がからんでいるのを見つけてあたしは腰をかがめた。



そのとき、インターフォンが鳴った。


ー誰だろう?ー


この家に来客があることはほとんどない。

あたしの両親も夫のあからさまな不機嫌顔に閉口してこの家には寄り付かなくなっていた。



ーたぶん、セールスだ。保険か車のー




あたしは玄関のドアを開けた。
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