ココアブラウン
「あなたは私のことを知らないのね」


コーヒーメーカーからドリップの音が聞こえる。

さっきまで霧のようだった雨は激しく大きな雨粒にかわっていた。

窓ガラスを水滴が流れる。



ー涙みたいー



「さっき西田の会社に電話したの。アシスタントだっていう女が出たわ。昨日から出張なのね。私が名乗ったら急に冷たい声になった」



コーヒーメーカーは静かになっていた。

あたしはコーヒーを入れるために立ち上がった。



「あなたは聞かないのね、私が誰なのか」


コーヒーとミルクをもってリビングに戻ると美樹、と名乗る女性はは立ち上がって窓の外をみていた。



「あの木、ずいぶん大きくなったのね。私がいたときは幹も細かったわ」

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