ココアブラウン
コーヒーカップを置くと美樹はソファに戻りまた煙草を細い指に挟む。

そのしぐさが美しくてあたしは思わず見惚れていた。


「私は西田の最初の妻よ。結婚したのは1年前だったわね。おめでとう。由香里さん」


挑むような目線だった。


西田に結婚歴があることはお見合いの時から聞いていた。

前の奥さんは「派手」なひと。

西田の息子を5年前に生み2年前に出て行った。

そんなことしか教えられてない。

そんな人があたしを訪ねてここに来た。



いったい何のために。


「西田と話したらあなたが家にいるから、と教えてくれたわ。休暇だからって。あなたも仕事をしてる人なのね?そうも見えないけど」


OLなのね、

つぶやくように言って美樹は2本目の煙草に火をつけた。


ライターはじゅぽんと重い音を立てる、


決して100円ライターに出せない高級な音。
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