ココアブラウン
肩をたたかれた。

驚いて顔を上げると見慣れたバッジが見えた。

思ってもみない人がいた。

「井上、さん?」

「やっぱり、ゆかちゃん。追いつくの大変だったよ。ヒールのくせによくこんなハイキングコース歩くよね」


新は会社で見るのと同じグレーのスーツでそこにいた。

ちかり、と胸のバッジが光った。見慣れた社章。

あたしはまぶしくて目を細めた。

「どうして、ここに?」

「それは俺のセリフ。ずっと後ろ追っかけたのに全然気づかないし、頂上ついたと思ったらいきなり本読み出すし」


新はあたしの隣に腰を下ろした。



あたしの心臓が脈うちはじめた。
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