ココアブラウン
「ゆかちゃん」


新は三たびあたしの名を呼んだ。


「君はがんばってる。それは誰もが知ってる。
いや、少なくとも俺は知ってる。
けど、がんばってるのは君だけじゃない」


顔を上げたあたしの上に新の顔があった。

新の瞳にぐしゃぐしゃに崩れたあたしの顔が映っていた。

自分が情けなかった。冷静でもオトナでもない自分。

目の前のオトコに甘えようとしてる自分。



ーあざといー




あたしは新の体を離そうとした。

肩を押し戻すと新はもっと強い力であたしを引き寄せた。

あたしの顔は新の固い胸にすっぽりとうずまった。



耳元で新の言葉が聞こえた。



「ゆかちゃん、君は覚えてないよね」
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