ココアブラウン
「俺はミスをしたのかもしれないな」


新は体を起こした。

「ゆかちゃんが誰かにすがろうとして俺はそれに答えた。たまたまゆかちゃんのそばにいたから。けど俺はもうゆかちゃんのことを好きになる権利はないんだ」



ーあたしには家庭がある。冷たくて暗くてもー



「君を監獄から連れ出すことはできないんだよ」

「ただ、あたしはあなたに気に入ってほしかった。それに」




新はあたしの言葉をさえぎった。


「ゆかちゃんは俺のことなんか好きじゃないだろ。俺はゆかちゃんのことを見てた。一年間ずっとだ。でも君はそれに気づかなかったし、俺のことなんか眼中になかった。たまたまなんだ。今日会ったのが他の誰でも君は同じ事をした」



違う。



ずっと新があたしの中に住んでた。



けど・・。


「こうやって俺が抱いたことで君は俺に期待するだろ?俺のこと好きなわけじゃないんだ。今の生活から抜け出るために利用したかっただけなんだ」


ひんやりとした部屋の空気が新の言葉をまっすぐにあたしに届ける。

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