ココアブラウン
ホテルのフロントに立った。

いくらホテルが24時間体制としてもさすがにこの時間にはロビーにも人はまばらだった。

観光客・ビジネスマン・外国人。ホテルのロビーはさまざまな人がいる。

普段なら決して出会うことのない人々がそれぞれの人生を抱えてここに立ってる。

どれだけの人が迷いのない人生を送ってるんだろう。

欲しいものを手に入れているんだろう。


眠そうなフロントマンが事務的に手続きをこなす。


そしてあたしに告げた。


「代金はすでにいただいていますがお連れ様は?」

「連れとは別行動なので」

「そうですか。では、お気をつけて」



新は今日は出張の続きなんだろう。

新の日常に本当ならあたしは含まれてない。

突発的な偶然であたしが新の人生にからんだ。


ほんの、ほんの少しだけ。


ホテルの前で客待ちをしていたタクシーに乗りあたしは駅へ向かった。
< 65 / 207 >

この作品をシェア

pagetop