ココアブラウン
美樹の会社は繁華街の真ん中にあった。

受付に立つとピンク色の制服の女性が立ちあがって迎えてくれた。

あたしは美樹を呼んでもらうよう伝えた。

「佐々木ですね。失礼ですがお名前は」


西田、と言いかけてやめた。

前の妻の前で西田の姓を名乗ることははばかられた。


「由香里です」

「ユカリさまですね。少々お待ちください」


受付の女性はインタフォンを取り上げた。


「フロントにユカリ様がお見えです。はい、はい」


送話口を手で押さえてあたしに伝えた。


「前の来客があるので応接室でお待ち願えますか?」


かまわない、あたしは告げると受付の女性の案内で応接のソファに腰掛けた。

そこにはパンフレットスタンドがあり、この会社で発行している雑誌が並べられていた。

あたしはR-BOOMを手にとって目を落とした。


今月の特集は「彼に愛されるOLの7日間スタイル」となっていた。

ページを開くと華奢で透けるようなカットソーや半そででファーがついているようなニットが掲載されていた。

値段は1着3万円前後。

上から下までバックや靴までそろえれば軽く30万は超えそうだった。



ー普通のOLってこんなもの着てるのかしら?



ページをめくると今度は「ハワイでのバカンス」


1泊400ドル、優雅な休日。がんばった自分へのご褒美の旅。
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