ココアブラウン
独身時代から毎日弁当持ちで会社に通い、結婚するために貯めたお金がある。

無駄遣いせず式や新婚旅行、生まれるだろう子供のためにコツコツと貯めた。


結婚することはオンナの幸せ。



それは母の教えでもあった。

弁当を持ってくる子は家庭的、そんな幻想を信じた時代もあった。


でも、オトコたちが惹かれるのは自分のために作られた弁当だけ。



ーしみったれた弁当を食らうオンナよりも、自分とランチに出るオンナのほうが魅力的ー



気づいた時にはもう周りのオンナたちは刈り取りをすませていた。


あたしは結婚が決まっても華やかなものは何もなかった。

式は行わず新婚旅行に行かず夫は子供を望まない。

母も期待外れだったにちがいない。ぽつりぽつりと愚痴をこぼしていた。


でも私も母も「結婚」という二文字に目がくらんでいた。


文句をつけて夫に捨てられることを恐れていた。


結局、貯まったお金は宙ぶらりんのまま。


あたしは十日あまり憑かれたように買い物に出かけた。


休みが終わるころにはプレセールのハガキが届き、販売員から直接新商品入荷の連絡が入るようになっていた。
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