ココアブラウン
「仕事を頼みたい」

部長は唐突に話しだした。

「大きな担当変更をこれから行うからいつもと同じように事務処理を。それからもうひとつは」

部長は息をついた。


「もうひとつは浅井絵里のことだ。彼女は親会社の奥野雄治と個人的な付き合いがあるようだが人の噂にならないうちに止めさせて欲しい」

「あたしが、ですか？」

「さっき本人には直接申し渡したんだがどうもピンと来ないらしい。同じ女性として君に頼みたい。それに君がいない間、事務はぐちゃぐちゃだ。後輩の指導も君の役割じゃないのか。休みを取るのにああいう状態じゃ。
もう後進を育てる立場だし浅井にも会社員としての自覚を持たせてほしい」


あたしに人の指導をする資格なんてあるの？

何の役職もない、ただ勤続年数の長いだけのあたしに。

「ところで休暇は楽しめたようだね。なんだか服装も変わったようだし。ま、深くは聞かないが仕事はきちんとこなしてくれ。話はそれだけだ」


あたしは一礼すると部長の前を辞した。
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