ココアブラウン
「やあだ、新ちゃん。そういうこと言うならランチおごってよ」


自席に戻ると新と絵里がじゃれあっていた。

休暇前と変わらない風景。


それなのにあたしの胸はチクリと痛んだ。


「先輩。ランチ新ちゃんがおごってくれるらしいですよう」


絵里があたしの姿を認めて大声を上げた。

新はちょっとあたしのほうを見ると絵里に話した。


「悪い、絵里。今日は俺めし行けないわ」

「えーっ!何で?せっかく先輩が戻ってきたのに。それに西田先輩なんかきれいになったと思わない?どんな心境の変化かじっくり話聞きたくない?ランチさぼる理由なにかあるの?」

「いや、まじで。仕事たまってっから」

「もう。じゃ、一回貸しね」

口をとがらせる絵里の顔が見える。

この二人は声が大きい。

二人は小声で話しているつもりらしいけど、あたしの席まで丸聞こえだ。


天真爛漫な絵里。

彼女のプライベートに苦言を呈したら絵里はあたしのこと嫌うんだろうな。

たまった書類の中から部長に言われた担当変更の書類を探し出す。
< 78 / 207 >

この作品をシェア

pagetop