ココアブラウン
雄治は相変わらずだった。


相変わらず人懐っこくて
あたしたちのテーブルにたどり着くまでにいろんな人に声をかけられて。

「西田さん、元気だった。お、絵里もいるじゃない。相変わらず遊んでるわけ。不良」

「雄治さん、失礼ですよ。西田先輩、ちょっと雄治さんに私がいかにまじめに仕事しているか教えてあげてくださいよ」

「何を言ってるんだよ。いつも遊んでるんだろ、仕事中。あ、新、新、ここここ」

新が書類の束を抱えてやってきた

かけていた携帯を抱えなおして、ちょっと右手をあげた。

「雄治さん、久しぶりですね。待ってましたよ。いつ行きます?飲み会」

「お前も仕事しろよ。じゃ、プライベートだから4人くらいでいいかな。ここにいる4人。絵里ちゃんと西田さんと」

「望むところですよ。ゆかちゃんは俺のとなりね。はい、確定」

「え、西田さんと。なになに。お前ら俺のいない間にそんな関係になっちゃったわけ」

あたしの口を挟む間が見つからない。


否定したくない自分がいる。

「雄治さん。そんなことないですよ。井上さんがそういっているだけ」

雄治は一瞬驚いた顔をした後笑い出した。

「冗談だよ。西田さん、相変わらず硬いな」

あたしはこんなときどんな顔をしたらいいのか知らない。


「ごめんごめん。じゃ、週末。店予約しておくよ」

あたしは新ともう一度会えることの期待を隠せない。

ずっと感じてなかったオトコへの感情。


そういえば


あたしは雄治ともこんな風に話したことがあったっけ?


仕事上のミスとそれに対するカバーを繰り返し、サポートしていた。
失敗も多かったけど雄治はどんどんステップアップして。
気づいたら雄治は大きな仕事をこなすようになっていた。


あたしは入社したときのまま同じ仕事。サポートする相手はどんどん巣立っていくのに。

絵里は?


仕事はすこしのんびりしているけど、男性から人気があって憎めなくて。

今日だって絵里がいたから雄治も新も話しかけてくれたんだ。


小悪魔、だよね。あなたは。

新は?

あたしは新のことを何も知らない。





それなのに知りたいと思っている。


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