ココアブラウン
絵里は部長に忠告されてた。雄治は誰からも何も言われないのだろうか。


「そうだよ。新の将来のこと考えたらこのタイミングの変更はプラスにならないからね」

「ほんとにそれだけ?」

「含みあるよな。何かあったの?それに化粧も変えちゃって」

「きれいになりたいと思ったから」

「俺から聞きたいよ。ほんとにそれだけ?」



ーそれだけじゃないけどー


雄治は唇の端で笑った。

目は笑わずに。


「顔に出るよな。西田姉さんは。なんにせよ女性がきれいになろうとするのはいいと思うよ。くどきがいがあるからさ。じゃ、飲み会で会おう。待ってるから」

雄治は去りかけて踵を返した。

「新にやさしくしてやってよ。あいつこの辺に知り合いもいないし嫁もいない。なんだかんだいってさびしがりやサンだからさ。なんかあったら知らせるから。頼んだよ。憧れのゆかちゃん」

握りつぶした紙コップをゴミ箱に放り込むと雄治は歩き出した。

あたしはまたパソコンのディスプレイに向かってやりかけのデータ入力を続けた。
< 83 / 207 >

この作品をシェア

pagetop