ココアブラウン
雄治の言うとおり新はいつもと違っていた。

でも目線はまっすぐあたしを見ていたし口調も乱れたところはなかった。


「なあ、ゆかちゃん、媚びてるだけだろ?」

「新!」

あたしの周りのオトコたちはさりげないふうを装って少しずつ距離を置いていった。

ただ、離れながらもあたしたちの会話の内容が聞こえる位置を保って聞き耳をたてていた。


「そんなふうにじゃなかったのに」

新は手にしたウイスキーのグラスを一気にあけた。

グラスの中の丸い大きな氷がからりと転がる音がした。

新の手からテーブルにグラスが置かれたとき大きな氷は半分に割れて ピシリ、ときしんだ。


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