ココアブラウン
「木曜、あたし行くわ」

「だから、西田さん。そんな気負わなくっていいって。じゃ、俺、部長に挨拶しなきゃならないから。もう行くわ。絵里、あとでメールするからちゃんと仕切れよ」

雄治はあたしたちのテーブルー絵里のほうー
に体を傾けるようにして言うと勢いよく立ち上がった。

そのはずみで絵里のココアが倒れた。

「雄治さん!気をつけてくださいよ」

「わりぃ。あとよろしく!」

雄治は部長のテーブルを目指して歩いているのだけどその間の社員たちにいちいち声をかけられている。

みんなが雄治をみて笑顔になってる。

「もう、雄治さん、あいかわらずしょうがないなあ」

新のスーツにココアが流れそうになってあたしはあわててハンカチを出した。

おろしたてのサンローラン。

いつものノーブランドじゃなくてよかった。

あたしは新にハンカチを差し出した。

「ゆかちゃん、こういうときのために紙ナプキンがあるから。気使うなよ」

新はテーブルのナプキンを5,6枚まとめて引き抜いて流れたココアの上に投げた。

ココアはこぼれたときのまま濃い湖を作っている。

新が動いた拍子にすぅーっと流れ始めた。





高いほうから、低いほうへ。
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