ココアブラウン
バカバカしい


よっぽどだ。


絵里が洗面所に入ってきた。

「あ、先輩、おつかれで〜す」

個室には入らずコンパクトを取り出す。

ファンデーションをスポンジに含ませてはたき始めた。

「昨日すごかったですね。雄治さん何も言わないでずんずん歩いて言っちゃうし」

シャドーをブラシに取る。

「新ちゃん、妙に先輩に突っ掛かるし」

アイホールに淡い色のシャドーを重ねていく。

「先輩は山本といちゃついてるし」

マスカラを取り出したところであたしは絵里を止めた。

「絵里ちゃん、仕事中にいつもそんなことしてるの?」

お構いなしに絵里はマスカラのブラシをしごいた。

「え、当たり前ですよ。だってオンナですもん」

まつげに漆黒の輝きを乗せていく。

「部長も営業もみ〜んなでていっていないし。舞台裏で若さキープしておかないと」




え?



「誰もいないって?」

「ええ、みんなでていきましたよ、営業に」


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