キミと、世界の果てまで。



レンと寛司は、あたしを護る様に男の人に威嚇している。


まだ愛する心を失っていなかった二人を見ると、自然と息苦しさも無くなっていった。




「ふざけんなよ…!」




寛司が思いっきり顔面を殴った事により、男の人はあっけなくその場に倒れた。


呆然としているあたしをよそに、レンと寛司は急ぐようにあたしの腕を掴んで立たせる。




「あ…寛司…」



「今殴ったのは正当防衛だ。俺は心を失った訳じゃねぇ。だから安心しろ、な?」




微笑む寛司を見ていると、自然と胸が撫で下ろされる。


レンと寛司に腕を引かれ、あたしは戦場と化している町を駆け抜け始めた。



―――至る所で、人々が欲望のままに何かを争い、殴り合い、蹴り合い、血を流しては倒れていく。


時々、包丁やトンカチを持って襲い掛かる人々も居た。



日本という国で、絶対に見る事の無いと思っていた光景が、今はこんなに身近で起こっているなんて。




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