キミと、世界の果てまで。
手を合わせ終えた老人は、枯れていた花を抜き、新しい花に差し替えると、墓に水を掛けて綺麗にする。
そして、もう一度手を合わせると、水が入っていたバケツを持って、墓地を後にした。
ジリジリと照りつける太陽は、容赦無く老人の水分を奪っていく。
家までの道のりの中で、ちょうど日陰に入ったベンチを見つけた老人は、微笑みながら真っ先にベンチへ辿り着き、腰を降ろした。
「いやぁ…さすが夏だね。毎日毎日暑くてやれんのぉ…」
あらかじめ持参していたタオルを手に取り、汗を拭っていると、元気な小学生の声が辺りに響き渡った。
一人は赤のランドセル、そして残りの二人は黒いランドセルを背負い、こちらへと向かってくる。
はてさて。今日は登校日なのだろうか。
そして、小学生が老人の前を通り過ぎようとした時、三人の会話が老人の耳に入り、そっと息を止めた。
「ミライちゃん、今日遊ぼう?」
「レンくんは黙ってろ!ミライちゃんは今日オレと遊ぶんだ…っ!」
「喧嘩しないでよ、レンくんにカンジくん!三人で遊べばいいでしょ?ミライは三人で遊びたいの…!」
それは、暑い夏の日の事だった。
-キミと、世界の果てまで。終焉-