愛して欲しいなんて言わない（番外編）

「きっとお腹が減っているでしょうね」

「鈴子さんから渡してやってよ
飲み物を口にしてないみたいだから」

鈴子さんが口を緩めると
可笑しそうに笑いだした

「よく見ていらっしゃるのね」

「ずっとあそこから
動かないんだ」

「わかりました」

「ありがとう」

俺は鈴子さんから離れた
すぐに大手企業の幹部らしき男に
俺はつかまり
つまらない話をが始まった

将来俺が社長になったときに
良い関係を築いておきたいという
男たちの下心が見え見えで
気持ちが悪かった

男との会話が終わると
俺は会場の入り口に目をやった

ちょうど鈴子さんが
離れていくところだった

理菜という少女の手には
皿が握られていた

戻ってくる鈴子さんの手には
空になったグラスがあった

飲み物も飲んでくれたようだ

俺はほっと息をついた

「理菜ちゃん
そうとう喉がかわいていたみたい
お腹もぐうぐう鳴っていたわ

でも両親と約束をしているんですって」

戻ってきた鈴子さんが俺に
話した

「約束？」

「ええ、人が多いから
迷子にならないように
入口から動くなって」

「なんだそりゃ！」

俺は思わず大きな声で出してしまう
両親たちは
美味しいお酒に美味しい料理を口にして
会話を楽しんでいるというのに

まだ幼いあの子には
飲まず食わずで
あそこに立っていろと？

俺は理菜の両親を睨みつけた

「駄目よ」

鈴子さんが俺の腕をそっと
掴んだ

「だって…」

「言っても無駄
それより隼夜さんが
お姫様のお相手をして
あげたほうがいいわ」