愛して欲しいなんて言わない(番外編)
俺の視線に気がついた鈴子さんが
頷くと
ウーロン茶を持って
理菜に近づいていってくれた

「で? 何の用?」

「知り合いいないんだもん
二人で休まない?」

クレアがカードキーを
ポケットから出した

「最上階のスペシャルスウィートよ」

クレアがカードを左右に振った
俺はクレアからカードを
受け取ると
会場を出て行った

ここにいても
つまらない話が続くだけ

クレアといるのも
つまらないが
大勢の人間に囲まれているより
体は楽だ

ここから姿を消すには
都合の良い相手だ

父親にも怒られない
きっと喜ぶだろう

クレアとセックスをすれば
さらに歓喜するだろうが

俺はそういうのは
好きじゃない

たぶん
一生
自分からしたいと思えるのは
心から好きになった人
一人だけだと思う
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