愛して欲しいなんて言わない(番外編)
「どこでもいい
すぐに使える部屋を手配してくれ」

「え?」

フロントの男が驚いた顔をした
俺は理菜を抱きかかえたまま
クレジットカードを出した

「この子をベッドで
寝かせてあげたいんだ

手続きならあとでするから
とりあえず部屋に案内してほしい」

「かしこまりました」

ホテルの従業員はパソコンを叩くと
30秒もせずにカードキーを出した

「こちらの部屋をお使いください
書類等はお部屋に運ばせます」

「ありがとう」

俺はカードキーを持つと
エレベーターに向かった

途中
電話ボックスの脇を通った

その陰から
嫌な声色が聞こえてきた

男女が戯れているようだ

俺はちらりと
男女を見た

男に抱かれている女は
理菜の母親だった

俺と目が合ったと思う
だが
女は男との楽しみのほうを
優先した

俺は熟睡している理菜を
抱いて
エレベーターに乗った
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