愛して欲しいなんて言わない(番外編)
月に一回
使うか使わないか
わからない離れにあがると
俺は畳の上に横になる

つまらない生活だ

父親の機嫌ばかりを気にする母親
子孫を残すことしか考えてない父親

俺には兄弟はいない
一人っ子だ

いまだに父親は
母親の妊娠を心待ちにしているようだが

母にはもう子はできない

俺を産んで5年後
母はまた妊娠した

でも父親の横暴な扱い
度重なる浮気
限界を知らない性欲に
母の体はストレスと疲労で
ぼろぼろだった

妊娠5ヵ月で
流産した

母親の股から
流れ出てくる真っ赤な血を
俺はまだ覚えている

真っ青になる母親に
父親が怒鳴っていた

母親の体を心配するどころか

流産しないように
どうにかしろっと
わけのわからないことを
叫んでいたのを覚えている

あれ以来
母親には子ができない体になった

でも母親は父親に報告できなかった

俺も言わなくていいと
5歳の頭でもわかっていた

だから今でも
父親は母親に期待をしていた
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