愛して欲しいなんて言わない(番外編)
「そ、そんなこと…」

「思ってないって?
嘘ばっかり

大人っていつもそうだ」

「えっと…娘は…」

「ああ
そうだね

ちゃんと寝かせてあげてよ
俺、あんたみたいな親が
大嫌いだ」

俺はホテルの鍵を渡すと
部屋を出て行った

エレベータの前を通り過ぎて
非常階段のドアを開けると

そこには
愛人男が携帯を開こうと
しているところだった

携帯がかすかに震えている

バイブだろう

予想的中!
馬鹿な大人の考えることなんて
丸わかりなんだよ

ばーか!

「あっ……」

男が俺の顔を見上げると
携帯をポケットの中に突っ込んだ

女からの電話だろう

俺が帰ったから
部屋に来てと甘い声で誘うんだ

つい数秒前の俺との約束なんて
頭から抜けていやがる

「よっ!
少し俺に付き合ってよ」

「え?
…あ、えっと、はい」

「嫌そうだね
別にいいけど…

断ってもいいけど
今日は愛人のところには
行かせないよ

子供が寝ている横で…
大人は汚いよ

最低だよ」



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