愛して欲しいなんて言わない(番外編)
理菜は両親たちの横を通り過ぎた

せっかく立ち上がった三人の大人が
理菜の姿を目で追っている

なんと間抜けな姿だろう

俺の唇が自然と緩んだ

理菜の両親は
俺の父親に頭を下げた

力関係で言えば
俺の親父のほうが強い

会社がはるかにでかいからな

理菜は大人たちも気にせず
振袖から煙草を出すと咥えた


着物に煙草は似合わない


俺も親父の横を通り過ぎると
ライターで煙草に火をつけようと
している理菜に近づいた

火のついた煙草を俺は
理菜の口から奪った

「君、高校生でしょ?」

俺は理菜の学校の教師だって
知ってる?

理菜とは学校で
顔を合わせたことがないから
知らないと思うけどさ

俺、こう見えても
教師なんだ

未成年は煙草を吸っちゃいけないんだよ

< 37 / 40 >

この作品をシェア

pagetop