彼が彼女になった理由(ワケ)
女として見てた?
綾斗が私を?

『な、何言ってんの、もー…』

まだ少しぎこちない笑顔を綾斗に見せる。
綾斗の事だ。
また「うっそ〜」とか何とか言って笑うんだ。

『冗談きつすぎだって!』

動揺を隠すように、さっきの綾斗のようにゴミを片付ける。

私のゴミは少なくてSサイズのコップに綺麗に収まった。
やっぱ綾斗は食べ過ぎだよ。

『お前さ。 これが冗談言ってる顔に見える?』

眉間にシワを寄せ、私に尋ねる綾斗。
怖い顔。
冗談じゃないの?

『嫌いなら嫌いでハッキリふれば?』

低く篭った声だ。
だって、だって…

『だって綾斗…ッ…』

私の事、本当は嫌いなんでしょう?
だってチョコレート、食べなかったじゃない。

『綾斗…だって…』

今更そんな事言われたってわからないよ。
私は綾斗を諦めたの。
綾斗が私を見てくれないから。
女友達を越えられないから。

だから…

『…帰ろっか。 送るね。』

戸惑っていた私の頭に綾斗がポンと触れる。
それだけで今まで張っていた緊張が解けた。

あ…
笑ってる。

『ほら、もたもたしてると置いてくぞ。』

綾斗が笑ってるよ。
もういいの?
私もいつも通りでいいの?

『夏波、鞄忘れんなよ。』

綾斗はいつもの笑顔で言うと、私に鞄を手渡す。
その何気ない行動がすごく嬉しくて綾斗の大切さを再認識した。

『ありがとう綾斗。 明日も早いし帰ろっか!』

そしていつも通り、隣の綾斗に笑顔を見せる。

これでいいんだ。
これが一番安心する。

友達でも恋人でもない、この関係が綾斗の一番近くにいられる。
私はそれをよく知っていた…
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