彼が彼女になった理由(ワケ)
太陽が沈む。
空は青から朱色に変わろうとしていた。
『…遅いよ…』
もうどれくらい待ったんだろう。
空も曇ってきた。
雨が降る前に戻ってこいよ…
曇り空は暗く、先程までの朱色の空はもう見えなかった。
帰ろうか。
そう諦めかけた。
でもクッキーだけは渡したい。
鞄からクッキーの袋を取り出し、玄関の扉の横に立っているポストに視線を移した。
そこには溢れる程のチョコレート。
『入らないし…』
どんだけモテんのよ、あいつ。
あーもー…
何で好きになっちゃったかなぁ、私。
『…馬鹿綾斗…』
馬鹿綾斗を好きになった馬鹿な私。
馬鹿すぎて笑っちゃう。
『馬鹿で悪かったな。』
…え…?
この声…
『人ん家の前で座り込んで… 何か用?』
恐る恐る顔を上げた私の目には、いつも見慣れた綾斗の姿があった。
『綾斗こそ… どこ行って…』
『ま、ちょっとね… 友達に呼び出されて。』
もしかして女の子?
今日がバレンタインだから?
『へ、へー…』
私の下手くそなクッキーなんかより、何十倍も美味しいもの貰ったんだろうな。
『夏波こそどうした? 家くるなんて久しぶり。』
久しぶり?
そうだね。
確かに1年前のあの日から来ていない。
綾斗を諦めると決めたあの日から…
『く…クッキー焼いたんだけど…綾斗要らないよね?』
手にしていた青い袋を綾斗に見せる。
なんて可愛くない女なんだ。
貰ってほしくて作ったのに。
『要らない。』
綾斗は袋を押して私の胸元に返すと、そう言い放った。
『俺、そんなクッキー要らないから。』
…言い直さないでよ。
涙が出そうになるじゃんか。
『でも… バレンタインとして夏波が作ったんなら、貰うよ?』
『え?』
『じゃなきゃ要らない。 俺、義理はもう欲しくないからね?』
綾斗は狡い。
素直になれない私を知ってて、意地悪をする。
義理じゃないんだと、本命なんだと。
ハッキリさせようとする。
本命だと解ってるくせに…
空は青から朱色に変わろうとしていた。
『…遅いよ…』
もうどれくらい待ったんだろう。
空も曇ってきた。
雨が降る前に戻ってこいよ…
曇り空は暗く、先程までの朱色の空はもう見えなかった。
帰ろうか。
そう諦めかけた。
でもクッキーだけは渡したい。
鞄からクッキーの袋を取り出し、玄関の扉の横に立っているポストに視線を移した。
そこには溢れる程のチョコレート。
『入らないし…』
どんだけモテんのよ、あいつ。
あーもー…
何で好きになっちゃったかなぁ、私。
『…馬鹿綾斗…』
馬鹿綾斗を好きになった馬鹿な私。
馬鹿すぎて笑っちゃう。
『馬鹿で悪かったな。』
…え…?
この声…
『人ん家の前で座り込んで… 何か用?』
恐る恐る顔を上げた私の目には、いつも見慣れた綾斗の姿があった。
『綾斗こそ… どこ行って…』
『ま、ちょっとね… 友達に呼び出されて。』
もしかして女の子?
今日がバレンタインだから?
『へ、へー…』
私の下手くそなクッキーなんかより、何十倍も美味しいもの貰ったんだろうな。
『夏波こそどうした? 家くるなんて久しぶり。』
久しぶり?
そうだね。
確かに1年前のあの日から来ていない。
綾斗を諦めると決めたあの日から…
『く…クッキー焼いたんだけど…綾斗要らないよね?』
手にしていた青い袋を綾斗に見せる。
なんて可愛くない女なんだ。
貰ってほしくて作ったのに。
『要らない。』
綾斗は袋を押して私の胸元に返すと、そう言い放った。
『俺、そんなクッキー要らないから。』
…言い直さないでよ。
涙が出そうになるじゃんか。
『でも… バレンタインとして夏波が作ったんなら、貰うよ?』
『え?』
『じゃなきゃ要らない。 俺、義理はもう欲しくないからね?』
綾斗は狡い。
素直になれない私を知ってて、意地悪をする。
義理じゃないんだと、本命なんだと。
ハッキリさせようとする。
本命だと解ってるくせに…