彼が彼女になった理由(ワケ)
《――3番線―列車が参ります》

生温い風と共に俺の目の前に現れたのは、全身赤色の鉄の塊。

プシューと気圧の抜けた音をたて、その重い扉が開く。

『ねー君さぁ。 めちゃくちゃ可愛いよねー』

列車に足を伸ばした俺にそう声をかけたのは「いかにも」といった感じの頭悪そうな高校生。

女の事しか考えてねーだろ、お前。

『足細っ……つか肌綺麗だよね? どこ行く予定?』

お前に見せるために手入れしてるわけじゃないし、どこ行く予定かなんて……
とりあえずお前の所じゃない事は確かだ。

『悪いけど、急いでるから』

汚い物を見るような目を向けてやると、男は何故か興奮したような様子だった。

『かっわいー! 媚びない子っていいよね』

……お前Mか。
俺はどちらかといえばSだから、気があうな。
なんて、男に興味ねーんだよ。

俺が興味あるのは……

『つか。 俺、男なんだけど。』

興味あるのは……

『は、はぁぁ!? スカート履いてんじゃねーかよ!!』

唯子……
お前だけだ。
< 30 / 33 >

この作品をシェア

pagetop