彼が彼女になった理由(ワケ)
『ここはテストに出るからなー、線引いとけよ。』

昼休み後の5限目は古文。
いまいち解らない昔言葉にアクビが止まらない。

窓際最後尾はさぞかし快適だろう。
太陽の光を浴びながらお昼寝タイムらしい。

…先生に見つかっても知らないよ?

『夕暮れは〜……

居眠り綾斗に気付かず先生は和歌を読み進める。

”夕暮れは雲のはたてに物ぞ思ふ
あまつそらなる人を恋ふとて”
(古今和歌集より)

恋愛の歌かな。
「恋」という字も入っているし。

『意味のわかる者は…』

先生の言葉に数人が手を挙げる。

”夕暮れになると雲の果てをながめてはもの思いにふけっている。
天上はるかにいるような手の届かないお方に恋い慕うということで”
(全訳読解古語(三省堂)より)

そんな意味の歌らしい。
和歌を聞いたって何とも思わないけど、意味を知れば切なくなる。

今も昔も人は同じ。
人は人を想って涙するのだ。

私も…
綾斗で何度も泣いた。
そしてようやく断ち切る事が出来たんだ。

今はもう、ただの友達でしかない…


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