彼が彼女になった理由(ワケ)
5限目が終わる頃、廊下から甘い香りが漂ってきた。
…クッキー?
そうか。
午前中に私達の調理実習があったから、午後からは2組の番だ。
いいな。
綾斗はまた沢山のクッキーを貰えるんだろうな。
私も男に産まれればよかった。
そんな事を思いながら黒板の文字をノートへ写した。
チャイムが鳴る頃、甘ったるい香りは校内のどこにいてもわかる程。
もうすぐココへやってくるのだろう。
『綾斗くん、これ…』
ほら、案の定…
駄目だよ君達。
『悪い。 俺、甘いの駄目なんだ。』
綾斗は受け取らない。
だから皆、綾斗の気付かぬうちに置いていくんだ。
『相変わらずすっごいね、綾斗くんは。』
私の友達で綾斗とも同じ中学校だった望(ノゾミ)がそう言いながら一冊の本を私の机に置いた。
”はじめてでも簡単! 手づくりチョコレート”
これは、まぁ、、
チョコレートを作ろうと思った人なら手を伸ばすであろう名前。
かくゆう私も去年、こんなような名前の本を手に取った。
『夏波はどうすんの? 今年。』
今年?
机に置かれたチョコレートの本?
『もしかしてバレンタイン?』
『そうそう、バレンタイン! 夏波は綾斗くんでしょ?』
望はそれが自然の事であるかのようにサラッと言葉にする。
しかもまだ綾斗のいる教室内で。
『あげないよ、誰にも…』
『え? 何で?!』
『あげるような人いないもん…』
綾斗は友達。
気にする事なんてない。
そう自分で決めたのに、声が小さくなる。
綾斗にこの会話を聞かせたくないと、心のどこかで思っているのかも知れない。
…クッキー?
そうか。
午前中に私達の調理実習があったから、午後からは2組の番だ。
いいな。
綾斗はまた沢山のクッキーを貰えるんだろうな。
私も男に産まれればよかった。
そんな事を思いながら黒板の文字をノートへ写した。
チャイムが鳴る頃、甘ったるい香りは校内のどこにいてもわかる程。
もうすぐココへやってくるのだろう。
『綾斗くん、これ…』
ほら、案の定…
駄目だよ君達。
『悪い。 俺、甘いの駄目なんだ。』
綾斗は受け取らない。
だから皆、綾斗の気付かぬうちに置いていくんだ。
『相変わらずすっごいね、綾斗くんは。』
私の友達で綾斗とも同じ中学校だった望(ノゾミ)がそう言いながら一冊の本を私の机に置いた。
”はじめてでも簡単! 手づくりチョコレート”
これは、まぁ、、
チョコレートを作ろうと思った人なら手を伸ばすであろう名前。
かくゆう私も去年、こんなような名前の本を手に取った。
『夏波はどうすんの? 今年。』
今年?
机に置かれたチョコレートの本?
『もしかしてバレンタイン?』
『そうそう、バレンタイン! 夏波は綾斗くんでしょ?』
望はそれが自然の事であるかのようにサラッと言葉にする。
しかもまだ綾斗のいる教室内で。
『あげないよ、誰にも…』
『え? 何で?!』
『あげるような人いないもん…』
綾斗は友達。
気にする事なんてない。
そう自分で決めたのに、声が小さくなる。
綾斗にこの会話を聞かせたくないと、心のどこかで思っているのかも知れない。