流れ星




「恵介♪」



デートの日、あたしはいつもとは少し違った。

服装を大人っぽくしたり、化粧の色もピンクじゃなく紫にしてみた………。



「……しぃ。

どこ行く?」



…………気付いてないの?

あたしの顔見ても普通の恵介……

あたしの顔、見てないの?



「……え、いが行きたい♪」



考えて一瞬泣きそうになった。
けど泣いたらメイクが崩れちゃうから、いつものように笑った。



「じゃぁ行こうか♪」



そう言い、馴れたようにあたしの手を握り歩きだした。




浮気したなんて思ってない。

ただ少し不安なんだ………
あたしは普段の恵介しか知らないから。
大学の中ではどんな風に笑うのか、まったく知らないしこれからもわからないだろうから………


…………知りたいんだ。

これが束縛なのかな。
束縛って悪いように聞こえるけど苦しいね………



映画館の中に入るともうすぐ上映時間だった。

席は一番後ろの真ん中。



「志帆、元気ないね?」



心配そうにあたしの顔を覗きこむ恵介………

恵介は優しい。
あたしの元気のなさをすぐ気付いてくれる………









< 33 / 39 >

この作品をシェア

pagetop