流れ星
「恵介♪」
デートの日、あたしはいつもとは少し違った。
服装を大人っぽくしたり、化粧の色もピンクじゃなく紫にしてみた………。
「……しぃ。
どこ行く?」
…………気付いてないの?
あたしの顔見ても普通の恵介……
あたしの顔、見てないの?
「……え、いが行きたい♪」
考えて一瞬泣きそうになった。
けど泣いたらメイクが崩れちゃうから、いつものように笑った。
「じゃぁ行こうか♪」
そう言い、馴れたようにあたしの手を握り歩きだした。
浮気したなんて思ってない。
ただ少し不安なんだ………
あたしは普段の恵介しか知らないから。
大学の中ではどんな風に笑うのか、まったく知らないしこれからもわからないだろうから………
…………知りたいんだ。
これが束縛なのかな。
束縛って悪いように聞こえるけど苦しいね………
映画館の中に入るともうすぐ上映時間だった。
席は一番後ろの真ん中。
「志帆、元気ないね?」
心配そうにあたしの顔を覗きこむ恵介………
恵介は優しい。
あたしの元気のなさをすぐ気付いてくれる………