ヒサイチ

車と接触したわけでもなんでもない。


しかし、ついさっきまで降っていた雨の水溜りが゙、その車のタイヤに敷かれて私の足元に飛び散った。


車は少し先で急停車した。


とっさに私は

『やばいな』と思った。


自分の足元を汚されたことより、急に車道にはみ出てしまったことの方が、責められるべきに感じた。


車から降りてきたのはスーツ姿の若い男だった。


若いといっても、おそらく私と同年代だろう。27か8といったところだ。


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