ヒサイチ

男は真直ぐに私を見ている。


その怒るでもなく笑うでもなく、彼のただ真直ぐな感じに私はたじろいだ。


叱られるのだろうか?


それとも足元を汚されたのだから、謝ってもらえるのだろうか?


顔も心も引きつらせて、私は男が側に歩み寄って来るのを、ただじっと待っていた。


「大丈夫でしたか?」


男は愛想のない低い声で私に話しかけて来た。



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