ヒサイチ

「いえ、貧血ではないと思います。ただぼうっとしていたら、人の波に押し出されて・・・」


男は私の話を聞いて、益々眉をしかめた。


赤信号で停まると顔を横に向け、おもむろに私の顔を見た。


そして突然、

「お前、岩崎真弥だな?」

と言った。


急に名前を言い当てられた私は、驚きで声も出なかった。


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