ヒサイチ
「好きな子ができちゃって。その子も俺のこと好きになっちゃったみたいで」
まるで照れたような口調だった。
さして珍しい台詞ではないかもしれないが、まさか文也の口から出るなんて想像も付かなかった。
そういう意味では、『想像を絶する言葉』だった。
私に向ってそう言った文也は、今まさに人生で初めての春が廻って来たかのよう
・・・何と言うか
しおらしいというか、初々しいというか
・・・そんな雰囲気だった。