マンホール
「そうだよ。どうかしたの?」


俺は優しく問いかける。女の子の声は次第に強くなる。電波が強いのか雑音であまり声が聞きとれない。


「マンホールには…………………がいる。気をつけて」


マンホールにはなにがいるって?雑音で聞きとれない。

「よく聞こえなかったからもう一回…」

「あたしはお父さんが好きなんだ。お母さんも好き。友達は菊久乃が好きだなあ。だって昔からの友達だから」

女の子はなにが言いたいんだ?もしかするといたずらなのか?だがこんな夜中にわざわざ…


その声は少しずつ元気をなくしていく。雑音は相変わらずざーっという音をたて、俺の耳まで届く。菊久乃って名前…どこかで聞き覚えが…
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