マンホール
お母さんはその話を続ける。

「最初はなにかのウィルスが流行ってると思ったんだけどね…。原因は違ったの」


ごくっと生唾を飲み込む。お母さんの発する次の言葉を待つ。


「見てしまったの」


お母さんの手は震えている。あたしはその手をそっと上から握りしめる。15年前の双子の話で一体なにが───


「それで…?」

お母さんは息を吸い込むと自分を落ち着かせようとした。


「体調不良だって言うから同僚の家にお見舞いに行ったのよ。そしたら…





なにかをきってる音が聞こえてくるの」
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